建築物省エネ法は、建築物のエネルギー消費性能の向上を目的として作られた法律です。
地球温暖化が進行している昨今において、建築物の所有者・管理者には、エネルギー性能の向上が求められています。
今回の記事では、建築物省エネ法の定期報告制度から内容まで解説します。
建築物省エネ法とは?
建築物省エネ法は、日本の建築物に対する省エネルギー政策の法律のひとつです。
建築物の省エネルギー化を促進し、建築物のエネルギー消費性能の向上を目的として作られました。
また、建築物省エネ法には、建築物の省エネルギー化に関する基準が定められており、建築物の設計や建設、改修などにおいて、その基準に沿った省エネルギー化が求められます。
定期報告制度は平成29年3月31日を持って廃止となった
建築物省エネ法律では、第75条に基づいて、対象建築物の新築や増築、改築を行う際は、建築物の消費エネルギー措置内容を特定行政庁へ届け出る義務があります。
加えて、届け出た後も、措置内容が維持されているかを3年ごとに定期報告する必要がありました。
しかし、この定期報告は、省エネ法の改正により、平成29年3月末を持って廃止となりました。
そのため、現在は、定期報告の義務はありません。
そして、平成29年4月1日以降は、改正後の省エネ法に基づく手続きが必要になりました。
建築物省エネ法の対象建築物
建築物省エネ法の対象建築物は、まず「住宅」と「非住宅」にわけられます。
「住宅」は、小規模(300㎡未満)、中規模(300㎡以上2,000㎡未満)、大規模(2,000㎡以上)の3つに分類されます。
「非住宅」は、オフィスビルなどの住居以外の目的で使用される建築物のことです。
これらの建築物は、種類や希望によって求められる措置が異なります。
詳しくは、建築物省エネ法の「規制措置」で解説します。
建築物省エネ法の「規制措置」と「誘導措置」
建築物省エネ法は「規制措置」と「誘導措置」の2つから構成されています。
定期報告制度は廃止されましたが、建築物の所有者と管理者には、エネルギー性能の向上が変わらず求められます。
「規制措置」と「誘導措置」では、エネルギー性能の向上を目的とした制度が設けられているので、正しく把握して漏れなく取り組めるようにしましょう。
それぞれについて解説します。
建築物省エネ法の「規制措置」
建築物省エネ法の「規制措置」は、一定規模の建築物に対して、省エネ法で定められたエネルギー消費性能基準への適合を義務付けたものです。
規制措置は、建築物の種類や規模によって、以下の3つにわけられます。
- 適合義務
- 届出義務
- 説明義務
適合義務
「適合義務」は、特定建築物 (2,000㎡以上の非住宅)の新築や、特定建築物の増改築 (
300㎡以上)について、エネルギー消費性能基準に適合しなければならないといったものです。
エネルギー消費性能基準の審査を受ける義務があり、もし適合していないと、確認済証や完了検査済証が発行されず、竣工が遅延する可能性があるため、注意が必要です。
届出義務
「届出義務」は、300㎡以上の建築物の新築・増改築時に、省エネ計画の届出を行わなければならないといったものです。
省エネ計画は、所管行政庁への提出が求められます。
省エネ計画がエネルギー消費性能基準に適合していない場合、所管行政庁には、建築物の所有者および管理者に計画の変更を命令できる権利があります。
また、省エネ計画は、着工の21日前までに行う必要があるため、遅れないように準備しましょう。
届出義務
説明義務とは、300㎡未満の建築物の新築や増改築時に、建築士から施主に対して、エネルギー消費性能基準への適否について、書面での説明を義務付けたものです。
建築物省エネ法の「誘導措置」
建築物省エネ法の「誘導措置」は、エネルギー消費性能基準に適合する建築物を対象とした認定・表示制度を設けたものです。
規制措置のように義務ではなく、あくまで任意の規定です。
誘導措置には、以下の2つの制度があります。
- 性能向上計画認定制度
- エネルギー消費性能基準の認定・表示制度
性能向上計画認定制度
性能向上計画認定制度は、省エネ性能の優れた建築物の省エネ計画を認定する制度で、認定を受けた場合、容積率の特例が認められます。
特例では、省エネルギー設備を設けた箇所の床面積を、建築物の容積率算定床面積の1/10までを不算入にできます。
エネルギー消費性能基準の認定・表示制度
エネルギー消費性能基準の認定・表示制度は、建築物がエネルギー消費性能基準に適合していることを広告や契約書等で表示できる制度です。
表示には2種類あり、建物の省エネ性能を第三者機関が評価し、段階の星マークで認定するものが「BELS」です。
一方で、エネルギー消費性能基準への適合を表す表示は「eマーク」です。
任意で受けられる制度なので、建築物の価値を高めたい方は、検討してみるのも選択肢のひとつです。
建築物省エネ法のまとめ
建築物省エネ法の定期報告から内容まで解説しました。
定期報告は、平成29年4月の改定をきっかけにすでに廃止となっていますが、建築物の所有者・管理者には、エネルギー性能の向上が変わらず求められます。
今回紹介した建築物省エネ法の「規制措置」と「誘導措置」を漏れなく把握・実行し、建築物の省エネ化を目指しましょう。